top of page

オデュッセイア

9月10日
読了時間: 3分

更新日:14 時間前

先日、映画館で『オデュッセイア』を観てきました。



あまりにも凄まじすぎて、上映後に劇場の明るいロビーへ放り出された瞬間、しばらく現実に戻れませんでした。


『オデュッセイア』は、古代ギリシャの詩人ホメロスによる叙事詩を映画化した作品。


トロイア戦争を終えた英雄オデュッセウスが、故郷イタケーへ帰るまでの長い旅を描いています。


監督・脚本はクリストファー・ノーラン。


『ダークナイト』三部作、『インセプション』『インターステラー』『ダンケルク』『TENET テネット』『オッペンハイマー』などを撮ってきた、「普通に撮ればいいところを、だいたい普通には撮らない」でおなじみの監督です。


今回はホメロスの『オデュッセイア』を、世界各地でのロケとIMAXフィルム撮影で映画化しています。


主演のオデュッセウス役はマット・デイモン。


息子テレマコスをトム・ホランド、妻ペネロペをアン・ハサウェイが演じ、さらにロバート・パティンソン、ルピタ・ニョンゴ、ゼンデイヤ、シャーリーズ・セロンなど、名前を書いているだけで映画一本分くらいありそうな俳優陣が出ています。


映画の公式サイトはこちら。


『The Odyssey』公式サイト


そして、この手の重厚な大作映画を観たあとにありがちなのが、知人に熱量高めで話した際、


「それ、そのうち配信で観ればよくない?」


と言われるあの現象です。


こちらは神々と人間、故郷への執念、10年に及ぶ壮絶な旅の話をしている。


ところが相手は、


「最近サブスクも高くなったよな」


「うち家族みんなで使ってるから、同時に観られへん時あんねん」


「あ、親戚も同じアカウント使ってるわ」


と、どんどん別の方向へ進んでいく。


僕は一言もサブスクの相談をしていません。


さっきまで僕はオデュッセウスが荒れ狂う海で命を懸ける話をしていたのに、気づけば相手の親戚がたぶん利用規約に違反しているという話を聞かされています。


なぜこうなった。


僕の『オデュッセイア』の感想は、最終的に知らない親戚のアカウント共有問題として処理されました。


効率だけを考えたら、配信で観るという選択肢もあります。


ただ、『オデュッセイア』に関しては、映画館、それもIMAXで観ること自体にかなり意味があると思っています。


これがまた、IMAXを体験したことがない人には説明しにくい。


「普通の映画館と何が違うの?」


と聞かれて、


「画面が大きくて、音もすごい」


と答えた瞬間、もう負けています。


その説明だけ聞いたら、


「じゃあ普通の映画館でもええやん」


で終わるからです。


違うんです。


巨大な画面いっぱいに荒れ狂う海が広がって、音が耳から聞こえるというより身体に当たってくる。


もちろん僕はずっと映画館の椅子に座っていただけです。


海にも入っていないし、船にも乗っていない。


それなのに数時間後、劇場を出る頃には、なぜか自分まで10年間ずっと海を漂流していたような疲労感があって、


「ちょっと海はもういいです」


という気持ちになっている。


そういう体験なんです。


でも、これをIMAXを知らない人に一生懸命説明すればするほど、


「へえ、そんなに違うんや」


で終わります。


終わった。


こちらは数時間かけて神話の世界から生還したつもりなのに、相手に渡った情報は「でかい映画館で映画を観た人」です……。


なお、このブログの内容はご来店時にお話しするつもりはありません。


来店時に、


「あのオデュッセイアの記事、読みましたよ!」


と言われても、僕はただ真顔でハサミの手を止め、数秒の沈黙のあとに、


「……で、髪の長さどうしますか?」


とだけ聞きます。


読んだことは忘れてご来店ください。


ただ、髪に関しては話は別です。


オデュッセウスが10年かけてイタケーに帰ったように、僕もお客様の髪については、ちゃんと目的地まで連れていきます。


10年はかかりません。

 
 
bottom of page