ディスクロージャー・デイ
先日、映画館で『ディスクロージャー・デイ』を観てきました。

(映画の詳細はhttps://disclosureday.jp/ へ)
監督はスティーヴン・スピルバーグ。
主演は、『オッペンハイマー』『クワイエット・プレイス』のエミリー・ブラント、『キングスマン』のコリン・ファース、そしてジョシュ・オコナー。
なかなかとんでもないメンバーです。
物語の中心にあるのは、国家が数十年にわたって隠してきた、地球外生命体に関する最高機密。
その真実を全世界に開示するのか、それとも隠し続けるのか。
人類の歴史や価値観そのものがひっくり返るかもしれない、かなり壮大な話です。
こういう映画を観たあとは、少し困ります。
映画館の中では、
「人類とは何か」
「我々は宇宙で孤独なのか」
など、いろいろと考えさせられます。
人類。
宇宙。
地球外生命体。
壮大です。
そして映画が終わる。
照明がつく。
劇場から現実世界へ放り出されます。
その瞬間、さっきまで人類の行く末を案じていた自分の人生のスケールの小ささに気づき、胃に激痛が走りました。
「あ、帰り牛乳買わなあかん」
さっきまで宇宙に知的生命体が存在するかどうかを考えていた人間が、数分後には冷蔵庫の牛乳の残量を気にしている。
そして翌日。
昨日あれだけ人類の未来を心配していたのに、朝になると、
「今日、サロンのタオル足りるかな」
が最重要案件になっています。
宇宙人が存在しているかもしれない。
政府が何十年も何かを隠しているかもしれない。
人類の歴史が、全部ひっくり返るかもしれない。
でも、タオルが足りない方が、今の僕には困る。
これが生活です。
もし明日、
「地球外生命体の存在が正式に確認されました」
という歴史的なニュースが流れたとしても、たぶん僕は普通に店を開けます。
お客さんとも当然、その話になるでしょう。
「宇宙人、ほんまにおったんですね」
「ねえ。びっくりしましたね」
そんな話をしながら、普通に髪を切る。
そして最後に鏡を見せて、
「こんな感じで大丈夫ですか?」
と聞く。
「大丈夫です」
ここで少しややこしくなります。
宇宙人がいても大丈夫なのか。
髪型が大丈夫なのか。
まあ、髪型でしょう。
ただ美容師を長くやっていると、この「大丈夫です」が全宇宙の共通言語になります。
ものすごく気に入っての「大丈夫です」なのか。
普通に満足しての「大丈夫です」なのか。
あと2ミリ切ってほしいけど、言うほどでもないの「大丈夫です」なのか。
もう上着を着て帰りたいの「大丈夫です」なのか。
全部、
「大丈夫です」
です。
宇宙人の存在より、こっちの方が長年の謎です。
人類はいつか地球外生命体の正体を解明できるかもしれません。
でも、お客さんの「大丈夫です」が何の大丈夫なのかについては、今のところ有力な説すらありません。
考えてみれば、かなり壮大な仕事です。
でも、多分、世界が変わるというのは、そういうことなんでしょう。
『ディスクロージャー・デイ』を観て、そんなことを考えました。
たぶん、これはスピルバーグが伝えたかったことではありません。
なお、このブログの内容をご来店時にお話しするつもりはありません。
「宇宙人が来ても営業するんですか?」
などと聞かれても、僕はただ真顔でハサミの手を止め、数秒の沈黙のあとに、
「……で、髪の長さどうしますか?」
とだけ聞き返します。
読んだことは忘れて、ご来店ください。
宇宙人のお客様も、まずはご来店前にご予約をお願いします。
当店は完全予約制です。




