バイオハザード
前回のブログでも書きましたが、同じ日に映画館で『クジラに落ちた男』と今回の『バイオハザード』を2本続けて観ました。
しかも、どちらも主演はオースティン・エイブラムス。
前の映画ではクジラに飲み込まれ、今度はゾンビだらけの街に放り込まれています。
この人、2026年は災難続きです。
今回の『バイオハザード』は、世界的な人気ゲームを原作としたサバイバルホラー。

監督は『バーバリアン』『WEAPONS/ウェポンズ』のザック・クレッガー。
出演はオースティン・エイブラムス、ザック・チェリー、カーリー・レイス、ポール・ウォルター・ハウザーなど。
主人公のブライアンは、ごく普通の医療品配達員。
ある医薬品をラクーンシティへ届ける仕事を引き受けたことで、とんでもない事態に巻き込まれてしまいます。
特殊部隊の隊員でもなければ、戦闘訓練を受けた人間でもありません。
ただの配達員です。
そんな人間が化け物だらけの街に放り込まれたら、できることは限られています。
とにかく走る。
今回の映画の宣伝文句は「90分間逃げろ!」
ずいぶん乱暴な指示ですが、命がかかっているので従うしかありません。
せっかく仕事で荷物を届けに来たのに、90分間も命がけで走らされることになります。
映画『バイオハザード』公式サイト
ところで、走るといえば、以前から気になっていることがあります。
うちのお店にも、走っているお客様がいます。
しかも何人かいます。
どういうことかというと、お店に来るとき、小走りで入店してくるお客様がいるんです。
遅刻しそうで慌てている様子ではありません。
どちらかというと、ボクサーがリングに入場するときのような軽快なフットワークです。
タッタッタッと入ってきます。
そして普通にカットやカラーをして、普通にお会計をして帰られます。
問題はここからです。
帰りも走るんです。
タッタッタッと。
最初は次の予定があるのかなと思っていました。
こちらの施術が予定より長引いてしまい、急いでいるのかもしれません。
それなら申し訳ない話です。
ただ、よく考えると、その方たちは毎回走っています。
毎回です。
ということは、僕が毎回その人の予定を狂わせているか、もともと走ることが生活に組み込まれているかのどちらかです。
できれば後者であってほしい。
しかも一人ではありません。
何人かいます。
そこで気になるのが、あの人たちはいったいどこまで走っているのでしょうか。
うちのお店は通路の奥にあるので、僕が確認できるのは、お客様が通路から出ていくところまでです。
その先は見えません。
もしかすると、通路を出た瞬間に歩いているのかもしれません。
それなら、うちのお店の通路だけを走っていることになります。
なぜでしょう。
あの数メートルだけ、走らないと気が済まないのでしょうか。
反対に、通路がウォーミングアップになっている可能性もあります。
僕が見ているあの小走りは、まだ準備運動の段階で、通路を抜けた瞬間から本格的に走り始めるのかもしれません。
だとしたら、僕は毎回スタート直前の選手を見送っていることになります。
駅まで。
職場まで。
自宅まで。
どこがゴールなのか分かりません。
仮に自宅まで走っているとしたら、どの時点で走るのをやめるのかも気になります。
マンションのエントランスでしょうか。
エレベーターに乗るまででしょうか。
あるいは自宅の玄関まで走り、鍵を開けたあとも小走りでリビングに向かうのでしょうか。
家族がテレビを観ている横を、小走りで通過していく。
冷蔵庫を開けるときだけ止まり、飲み物を取り出したら、また小走りでソファへ向かう。
そこまでいくと、もはや移動手段が小走りです。
歩くという選択肢を、どこかで捨ててきたことになります。
ただ、考えてみれば、僕が確認しているのは美容室を出る瞬間だけです。
その人が普段どんな速度で生活しているのか、まったく知りません。
会社の廊下でも走っているのか。
スーパーで豆腐を買うときも走っているのか。
休日に散歩へ出かけて、散歩なのに走っているのか。
そもそも、走っているときは何を考えているのでしょう。
人間が走る理由には、いろいろあります。
急いでいる。
運動したい。
何かから逃げている。
バイオハザードの主人公は、最後の理由です。
しかし、うちのお客様は違うはずです。
少なくとも、店内には追いかけてくるゾンビはいません。
僕がカットを終えた瞬間、お客様の中で何かが切り替わっているのでしょうか。
「よし、帰るか」
ではなく、
「よし、走るか」
という感じなのでしょうか。
もしかすると、僕のカットが、お客様を走らせるほどの活力を与えているのかもしれません。
そう考えると、美容師としてなかなかの仕事をしていることになります。
今のところ、歩いて帰るお客様の方が圧倒的に多いですが。。。
映画の主人公は生き延びるために必死で走ります。
一方、うちのお客様は、髪を切ってすっきりした状態で、何の説明もなく走り去っていきます。
どちらも目的地はあるはずですが、僕に分かるのは出発地点だけです。
もちろん、本人に聞けばすぐに解決する話です。
「いつも走って帰られますけど、どこまで走ってるんですか?」
ただ、美容師として長年仕事をしてきましたが、この質問をするタイミングがまだ見つかりません。
カット中に聞くには唐突すぎますし、お会計のときに聞くと、走って帰ることを前提に話しているようで変です。
かといって、お客様が走り出してから呼び止めるのはもっと変です。
僕が追いかければ、さらに話がややこしくなります。
通路から小走りで出ていくお客様。
その後ろを小走りで追いかける美容師。
第三者から見ると、何かが始まっています。
『バイオハザード』なら、このあたりから感染が広がるのかもしれません。
とりあえず、追跡する予定はありません。
なお、このブログの内容はご来店時にお話しするつもりはありません。
ただ、もしお客様から、
「どこまで走ってるか分かったんですか?」
「もしかして私のことですか?」
などと聞かれても、僕は真顔でハサミを置き、
「……で、髪の長さどうしますか?」
とだけお答えします。
読んだことは忘れてご来店ください。
最後に、走って帰られるお客様へ。
お帰りの際、店内での準備運動はご遠慮ください。ストレッチも含みます。




